こんにちは、あかつき写房の本田です。今日は、便利堂というところで体験したコロタイプのワークショップについてレポートしてみたいと思います。え、コロタイプって何??湿板写真の話じゃないの??厳密にいうと、湿板写真をコロタイプという技法で印刷してきました。という話です。
実はコロタイプは湿板写真と同じ時代に活躍した古典印刷の技法なんです。そのコロタイプを今でも守っている会社が京都にあるのです、しかもご近所に!!これは行かないわけにはいきません。素晴らしい体験をさせてもらいましたので、ぜひ本編をご覧ください。
コロタイプと湿板写真
調べたとこによりますとコロタイプは1854年に発明された印刷技法です。湿板写真が発明されたのが1851年なので、まさに同じ時代に生まれた印刷技法です。湿板写真は写真撮影技術すなわち版を作る技術、一方で、コロタイプは印刷技術すなわち複製する技術です。ちょっと分かりにくいでしょうか。「湿板写真で撮影した写真をコロタイプ印刷する」みたいな感じです(今回私たちがトライしたことです)。湿板写真が20世紀にはほとんど乾板写真に置き換わってしまったのですが、コロタイプはむしろ乾板写真やフィルムの時代に全盛期を迎えており、本やアルバムなどの印刷に使われていました。
コロタイプと便利堂
今回、私たちがワークショップでお邪魔させていただいた便利堂さんは1887年創業(明治20年)!!当時はたくさんのコロタイプ印刷所があったらしいのですが、今では世界にも数社しか残っておらず、その中でもカラーでコロタイプ印刷ができるは便利堂さんしかありません!!
便利堂さんは、コロタイプを世に広げる活動を積極的にされており、写真アワードやワークショップなどにも力を入れておられます。また、様々な業界とのコラボレーションや展示、国家事業にも参加されていてとても面白い企業さんなのでぜひホームページを覗いてみていください。
いざコロタイプ体験!!
さて、前置きが長くなりましたが、コロタイプの体験について書いていきます。
ワークショップの前にコロタイプの全工程を見学するツアーに参加しました。ツアーというだけあって、広い迷路みたいな工場内を、あっちへ行ったりこっちへ行ったり。感想としては、とにかく工程が多いです。湿板写真とは比べ物になりません。
今はデジタルデータから版を起こしていきますが、アナログの時代の頃は版を作るために乾板で撮影をされていたそうです。写真室にはその頃の大きなカメラと暗室がありました、私たちが使っているカメラより、断然大きい!圧巻でした。
コロタイプは最終的にティシューというものを作って、そのティシューにインクを入れて印刷をしていきます。このティシューを作るための工程が、まあ大変です、、、
厚さ1センチの60センチ×60センチほどのガラス板に感光剤を塗布してオーブンで乾燥させます。夏でも暖房つけるくらいの高温の部屋で、分厚くて重いガラスをコントロールするのは人の手です。世界でも稀なこの職人技をガラス越しで見せていただきました。この後も、熟練した職人にしかできない工程をいくつも得て、コロタイプは作られるのです。
進化するコロタイプ
ツアーで見学したティシューは最終的に大きな機械にセッティングして使われます。分厚いガラスに大きな機械。これらは、業務用で職人にしか扱うことはできません。ひたすら大変なプロセスですが、ただ古いやり方を守っていこうというわけではなく、置き換えられるものはどんどん現代のものにアップデートされていることは驚きでした。
デジタルを使うところはデジタルを使い、薬品を環境に良いものに変更したり、、、古いものを守っていくには、続けていくにはこういう努力が必要なんだという勉強になりました。
また、私たちが体験させてもらったワークショップは、その極みで、この複雑で難解なプロセスを、よくここまで(私たちのような一般人ができるように)落とし込めたなという、唯一無二のものになっていました。
コロタイプ体験
事前にデジタルデータを送っておくと、そのデータからティシューを作っておいてもらえます。今回は湿板写真のデータをあかつき写房でスキャンしたデータを使いました。
ティシューにインクを入れて、版画で使うプレス機を使ってひたすらプリントです。インクの入れ方によって、仕上がりがまるで違います。一つの10枚、20枚と繰り返すと、だんだんとローラーの扱いに慣れてきて、インクの具合を見て仕上がりが少し想像できるようになってきました。調整次第でテイスト違いのプリントを作ることができるので、色や濃度や紙を変えていくつかのバリエーションを作って楽しみました。
すみません、夢中になりすぎて、作業中の写真がありません、、、
湿板写真からコロタイプを作ってみて
湿板写真(アンブロタイプ)はガラスに像を残し、そのガラス板を直接鑑賞することができます。「唯一無二の一枚を作ることができる」湿板写真の価値はそこにあると言っても過言ではありません。
しかしこのことは、湿板写真家が作品を引き伸ばしたり、複製したくないということを意味しているわけではありません。湿板写真の価値をそのままに、または価値をさらに上昇させるようなプリント技法があれば、写真家はそれを必要としています。
今回、湿板写真からコロタイプを作ってみて、品質、保存性、質感など全ての面で申し分ないものだということがわかりました。コロタイプは湿板写真をプリントする時の選択肢として最適なものの一つであることは間違いありません。
さて、いかがだったでしょうか。もし、ワークショップやイベントなどであかつき写房にいらっしゃることがありましたら、湿板写真から作ったコロタイプをお見せしますので、リクエストしてくださいね!
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